読み物一覧

自分の「したい」を発信することの大切さ

#column
2021/08/06

中野 雅俊

これまでに、私は会社経営を通じて、インターン生や出向社員など、社会に出る手前の人や、出たばかりの人々の育成に携わる機会が多くありました。

今回の記事では、その中でいつも伝えている「組織の中で、若くても遠慮や忖度をせず、積極的に提案すること、自分の想いを伝え、行動を起こすことの大切さ」について書きます。

不安や遠慮はいらない

多くの企業が求める人材像として、新卒・中途問わず、「自主性」や「積極性」「創造力」などの「自発的に何かを考え行動すること」が重視されることが多いかと思います。

また、これらの資質が仕事をする上で重要であることは、誰もが感じるところではないでしょうか。

しかし実際のところ、組織が大きくなればなるほど、また、そこで働く当人が若ければ若いほど、「自発的に何かを考え行動すること」は難しくなるのではないでしょうか。

「若い自分がこんなことを言っていいのか」「空気を読めてないのではないか」「周りの人や上司はどう思うだろうか」など、様々な不安がよぎり、遠慮してしまうこともある思います。

もちろん、まだ知識や経験が不足しており、そもそも提案したり周囲を巻き込んで行動を起こしたりすることが難しい場合もあるでしょう。

しかし、知識や経験とは関係の無い、「やってみたい、こうしたい」という想いは、立場や年齢関係なく多くの人が抱くことであり、それを発信することは誰でもいつでもできます。

この「やってみたい、こうしたい」という想いこそが、経営者やマネージャーが若い人達に求めていることであり、かつ、その想いに対して実際に挑戦の機会が多く与えられることは、自らの経験から自信を持って言うことができます。

想いを発信すればチャンスは巡ってくる

会社を興す以前に、私は100年続く伝統的な通信機器メーカーでエンジニアとして働いていました。

学生時代から、社会人になったら「特許を出したい」「海外で働きたい」「新規事業開発に携わりたい」と思っていました。

そのため、技術経営の講義を受けたり、英語スピーチサークルに入ったりと、「打席に立ったらいつでもバットを振れる」ように着々と準備を進めていました。

それから、新入社員としてキャリアをスタートするやいなや、1年目から周りの上司、先輩、同期と社内の色んな人に「特許を出したい」「海外で働きたい」「新規事業開発に携わりたい」という想いを口に出して伝え回っていました。

当時、タイミング良く社内公募型の新規事業立ち上げプロジェクトが始動しました。

このプロジェクトでは、まさに私の「特許を出したい」「海外で働きたい」「新規事業開発に携わりたい」という希望が3拍子で揃ったものとなっていました。

かなり図太い性格の私でも、さすがに「応募したい。だけど、右も左もわからない新入社員が応募して良いのか。」とためらっていました。

通常であれば、1年の研修を終えた後に、複数の事業部の中から配属先が決定され技術者として本格的なキャリアを積んでいくのが基本的な流れとなっていました。

しかし、当時私の「やってみたい、こうしたい」を耳に入れていた新規事業プロジェクトのリーダーが、「そういえば君はこんなことを言っていたよな。このプロジェクトならそれができるぞ。」と連絡をくれ、プロジェクトメンバーとして引き入れてくれました。

その後、実際にそのプロジェクトでは、特許の執筆、海外での開発、通信事業の立ち上げと、自分がやりたいと言っていたことについて全て経験を積ませてもらうことができました。

これからキャリアを積んでいく人に向けて

当時の自分の知識や経験からすれば、身の丈を超えた手に余るようなことも多かったかもしれません。

それでも自分のことを信じて仕事を任せ続けてくれた上司や先輩のおかげで、エンジニアとして大きく成長できました。

自分の「やってみたい、こうしたい」に対して、それを遠慮せずに発信し続けること、それを実現するために努力し準備し続けること、そして与えられたチャンスに対して精一杯やり切ること。

これらが実行できれば、経験や年齢に関係なく自分のことを見守り背中を押してくれる人が現れるのだと強く実感しました。

今はまだ学生でこれから社会に出ていく人、就職したばかりでこれからキャリアを積んでいく人、それぞれ大小問わず自分の「やってみたい、こうしたい」があるかと思います。

これから、自分が所属する組織において、それを積極的に発信し、その実現に向けてひたむきに努力し続ければ、それを実現するチャンスが必ず巡ってくるのではないでしょうか。